不動産鑑定士の自由研究

不動産鑑定士という職業の認知度アップに貢献したい

令和4年 地価公示が発表されました

毎年、1月1日時点の地価を定点観測する地価公示

今年も発表されました。

だいたい3月下旬に発表される流れになっております。

 

テレビや報道などでは、昨年より上がったとか下がったとか、変動率が話題になります。

 

地価公示のために土地の価格を評価するのは、不動産鑑定士の重要な業務のひとつです。

 

われわれ不動産鑑定士も、地価公示業務で地価を決めるうえで、特に変動率には注意しています。それが定点観測の意義でもあります。

 

ここ福岡は、上昇基調のようです。

細かい論点はまたの機会にお話できればと思いますが、今日は地価公示にまつわる裏話をひとつ。

 

地価公示の発表の日には、不動産鑑定士がテレビでインタビューに答えている映像が流れると思います。

たとえば、福岡県では100人を超える不動産鑑定士地価公示業務に携わっていますが、テレビで喋る不動産鑑定士はひとりです。

 

おそらく、どの都道府県でも、テレビに出演するのはひとりだと思います。

 

これは、いろんな不動産鑑定士が独自の観点で独自の主張をして、話がばらばらになってしまうのを防止するためで、マスコミ対応はいわゆる「代表幹事」と呼ばれる都道府県の代表者に限定されているのです。

 

https://t-kantei.sakura.ne.jp

いよいよ独立開業です

久しぶりの更新になります。

さぼっていたわけではなく、本当に忙しいのです。

と言うのも、実は今月末で会社を辞め、4月1日をもちまして独立開業することとなり、その準備に追われております。

開業準備をリアルタイムでお伝えできればと思っておりましたが、そんな余裕がありません。

少し時間ができましたら、ボチボチと振り返りながら、不動産鑑定士を目指しておられる皆さん、独立開業を目指しておられる皆さんに、情報発信をしていきたいと思います。

雑誌の紹介です

f:id:hudousankanteishi:20220221104023j:plain


士業として、やはり気になるところですので、私も読んでいるところです。

内容はネタバレになりますので書けませんし、私も読み進めている最中です。

税務をされている方はお忙しいと思いますが、確定申告が終わってからでも、パラっと目を通されてはいかがでしょう。

税理士さんや公認会計士さんが読まれて、どのようなご意見、ご感想をお持ちになるかも気になります。

不動産鑑定士は、エコノミストでもなかなかネタにすらしてもらえません。

ノース天神 ミーナ天神 統合

ビッグバンで激変中の福岡天神地区に新たな計画です。

ノース天神とミーナ天神が大規模改修の上、統合するようです。

ビッグバンを活用した建て替えも検討されたようですが、大規模改修での対応になったようです。

 

ノース天神の前身はショッパーズプラザ福岡(ダイエー福岡店)で昭和46年開業。

ミーナ天神の前身はマツヤレディスで昭和48年開業。

Wikipediaより)

どちらも建物自体はかなりのご高齢です。

 

建て替えではなく大規模改修を行うことについては、相応の理由があると思いますが、どちらかしか選択できない中で、その効果を比較することは難しいですので、その適否を判断するのは困難です。

 

ところで、この施設を所有しているのは、福岡スタンダード石油株式会社という、ガソリンスタンドが本業の会社です。

福岡の不動産市場においては、いつの頃からか重要なプレイヤーとなっており、あっと驚くような不動産を多数、所有されています。

ほかにも福岡パルコを所有していた学校法人など、本業ではない企業などが不動産市場において重要な地位を占めていることを考えますと、経営者にとって不動産は魅力的なコンテンツなのだと感じます。

合理的推定という業界用語

合理的推定という都合のいい言葉があります。

不動産鑑定士なら、一度は使ったことがある言葉ではないでしょうか。

要するに、事実は分からないんだけれども、なんだかんだと理由をつけて、事実であったかのように話を進めてしまうことです。

 

そもそも不動産鑑定士の仕事というのは、だいたいの事において、実際のところはよくわからない不動産の価格や賃料を、あれこれ理由をつけて、これが正しいのであると言い切ってしまうことですので、言葉遊びのような文章を書くのは得意中の得意です。

 

ところで、税務上の必要から、不動産を売却した際に、取得費を合理的に推定してほしい、というご依頼があります。

 

所得税の仕組みは、簡単に言いますと、

(不動産を売った時の価格)-(不動産を買った時の価格)=(譲渡益)

利益が出ますと、この利益に税率を掛けたものを税金として納めなければなりません。

逆に、高く買って安く売ったら、譲渡損となりますので、税金はかかりません。

 

原則として、不動産を買った時の価格というのは、売買契約書などを以て、自分で証明しないといけないのですが、たとえば相続した土地なんかですと、契約書も見つからないし、いくらで買ったかも知らない、などというケースが出てまいります。

 

この場合、買った価格が証明できなければ、買った価格は売った価格の5%とされてしまいます。

ですから、2,000万円で売った土地ですと、

2,000万円×5%=100万円で買ったこととされます。

そして、

2,000万円-100万円=1,900万円の利益が出ているから、

1,900万円×20%=380万円の税金がかかります。

大昔に買ったなら納得ですが、2,000万円で売れる土地を100万円で買えるなら、誰だって土地を買い漁りますよね。

 

では、契約書を見つけられない方が悪いのか、というと、極論すればそうなのですが、税務署もそこまで鬼ではありません。

買ったであろう価格を合理的に推定できれば、それを採用していいですよ、と、もちろん国税局が堂々と言っているわけではないのですが、国税不服審判所という、税金のことで揉めたときに裁決を下してくれるところで、そういう裁決例が出ていることから、いざというときの手段として使う税理士先生がいらっしゃいます。

このとき、この合理的推定を行うのが不動産鑑定士

税額に直結するお仕事ですので、不動産鑑定士としても、どのような意見を述べれば国税局が折れてくれるのか、勉強を積み重ねて、もっともっと人々のお役に立ちたいものです。

意外と不動産鑑定士に必要な能力

ずいぶん前に、不動産鑑定士試験の受験生向けに書いた記事を、思いのほかお読みいただいているようですので、久しぶりに受験生向けの記事を書いてみたいと思います。

 

不動産鑑定士に向いている人、というテーマで書いたこととは違う、意外と不動産鑑定士に求められる能力について。

 

ズバリ、運転テクニックです。

 

現場は必ずしも走りやすい道路の面しているとは限りません。

集落の中のクネクネ道を走ることもありますし、あぜ道を走ることも、未舗装の林道を走ることも。そんな道を決死の覚悟で突っ込むと、行き止まりになっていて、Uターンもできず、来た道を恐る恐るバックで戻る羽目になり。

 

では、運転が苦手だと、不動産鑑定士に向いていないのか、と言われると、否。

安心してください。

きっとイヤでも運転はうまくなります。

けっこう移動距離の長いお仕事ですので。

 

それでも苦手という方。

私は地方都市の不動産鑑定士ですので、ひたすら車を走らせていますが、都心部の先生は電車移動がメインと聞きます。

 

また、どこかに就職されたなら、どこの鑑定士事務所にも一人は運転の達人みたいな人がいます。

逆に、運転に自信がある方。どこの鑑定士事務所でも重宝されると思います。

野菜工場は農地か

野菜工場という言葉があるのかどうか分かりませんが、一般的には植物工場と呼ばれているのかな。

 

一度は書きたいと思っていたネタですが、書くのを忘れておりました。

 

分かりやすく「野菜工場」と呼びましたが、要するに、野菜を栽培する工場のことです。モヤシとかレタスとかを、土に植えて育てるのではなく、工場の中で栽培してしまう、というものです。

 

私は農業の専門家ではありませんので、メリットやデメリットについては省略しますが、お天道様や雨の恵みに頼らず、環境をコントロールできますので、不慮の事故に遭う確率も低く、生産性が高いはずです。

 

私が問題にしたいのは、この場合の固定資産税です。

 

一般的に、農地の固定資産税というのは、すごく廉価です。

では、野菜工場の敷地の固定資産税はどうか、と言いますと、これは宅地として扱われますので、農地の何百倍も高いです。

 

同じ野菜作りをしてるのに、なぜ?という疑問を、とあるお役所で世間話として聞いたところ(聞かれたお役人さんも迷惑だったでしょうが)、いわゆる農地法というのは、農業を守る法律ではなく「農地」を守る法律だ、という説明を受けた記憶があります。

 

ふと思い出して、農地法を調べてみました。

 

第1条(目的)

この法律は、国内の農業生産の基盤である農地が現在及び将来における国民のための限られた資源であり、かつ、地域における貴重な資源であることにかんがみ、耕作者自らによる農地の所有が果たしてきている重要な役割も踏まえつつ、農地を農地以外のものにすることを規制するとともに、農地を効率的に利用する耕作者による地域との調和に配慮した農地についての権利の取得を促進し、及び農地の利用関係を調整し、並びに農地の農業上の利用を確保するための措置を講ずることにより、耕作者の地位の安定と国内の農業生産の増大を図り、もつて国民に対する食料の安定供給の確保に資することを目的とする。

 

念頭にあるのは、「農地改革の成果を恒久的に維持」することのようで、第1条の前段は「農地」を守るとおっしゃっています。

しかしながら、最終的な着地点は「国民に対する食料の安定供給の確保」ですから、野菜工場のほうが供給は安定するはずです。

 

そこで、話が遠回りですが、「農業」とは何なのか、と言いますと、辞書によっては「土」の上で農作物を作ること、といった定義がされているようで、そうしますと野菜工場は農業ではなく「工業」に区分されることになります。

 

近年、ビニールハウスの敷地にコンクリートを打っても、農地として取り扱いますよ、という制度ができたようですが、

 

https://www.city.takamatsu.kagawa.jp/kurashi/sogo/shinseisho/shinseisho/sangyo/tenyo/nousakumotsusaibaiko.files/nousakumotsu_s.pdf

 

それより高度な技術と、多額の資金をつぎ込んで、高い固定資産税を課される現行制度には、あまり納得できません。