不動産鑑定士の自由研究

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配偶者居住権の価格の評価3

前回は、配偶者居住権の価格を求める場合、その場面によって求め方が異なり、相続税の申告にあたっては、相続税評価額でよいけれども、遺産分割協議などの「時価」が求められる場合には、相続税評価額では事足りない、というお話でした。

 

そこで、配偶者居住権の時価はどのように求めることになっているのか。

日本不動産鑑定士協会が出しております「配偶者居住権等の鑑定評価に関する研究報告」によりますと、

 

○配偶者居住権の価格=(対象建物の賃料相当額-必要費)×年金現価率

 

○配偶者居住権が付着した建物及びその敷地の経済価値

 =配偶者居住権消滅時の建物及びその敷地の価格×複利現価率

 

となっておりまして、相続税評価額の求め方とずいぶん異なることがお分かりいただけると思います。

(詳しくは、タックスアンサーNo.4666「配偶者居住権等の評価」参照)

 

鑑定評価におきましては、上記ふたつの価格を足し合わせても、1にはなりません。

もちろん、鑑定評価であっても、年金現価率や複利現価率において採用する期間については、予測の限界を超えていますので、相続税評価と同様に公的な指標を参考にするしかないと思いますが、前々回に述べましたように、同じ不動産を評価するにあたりましても、

相続税の申告 = 相続税評価額

○遺産分割協議 = 時価

というように、目的によって求めるものが違ってまいりますので、どうぞご注意ください。