日本で最も地価が高いところは銀座の「山野楽器」ということになっているようです。
私は銀座に行ったことがないんですけど、毎年、3月末ごろになりますと、国土交通省から地価公示の結果が発表されまして、そのなかで最も高値をつけるのが「中央5-22」というポイントで、令和3年1月1日時点の価格は1㎡あたり53,600,000円ということになっております。
この地点の鑑定評価書も、国土交通省のHPで閲覧できるようになっておりますので、もしご興味がありましたら、「土地総合情報システム」から見てみてください。
この地点の面積は454㎡となっておりますので、㎡単価に掛けますと、土地だけで243億円もすることになります。
この鑑定評価書をご覧いただきましたら、鑑定評価額を決定するにあたりまして、
○取引事例比較法
○収益還元法
という2手法を採用していることが分かります。
取引事例比較法は、周辺で発生した土地取引を調査して、取引価格を調べ、この価格から公示地の価格を導き出す手法です。
一方、土地の価格を求めるときに適用する収益還元法は「土地残余法」と申しまして、土地の上に賃貸用建物を建てることを想定し、その家賃収入を建物と土地に割り振って、土地価格を求めていきます。
この「中央5-22」で想定されている賃貸用建物は地上12階地下2階の店舗ビルで、一棟貸しを想定しておられます。
そこで想定されている家賃が月額7,000万円を超えております。
そこで考察。
不動産鑑定評価的には、その場所で商売をして生み出した利益の一部を家賃として支払えるから、その不動産はそれだけの家賃を生み出すことができる実力を持った不動産として見ることができるのです。
逆に言うと、そこで商売をしても売り上げが上がらなければ、家賃を支払えませんから、収益性の低い不動産 → 価値の低い不動産ということになります。
私はあいにく、銀座で商売をすると月額7,000万円の家賃が支払えるほど売り上げが上がるのかどうか分からないのですけれども、純粋にこの場所で商売をして、その中から家賃として支払える金額を家賃とするなら、そんなに高額の家賃を支払えないんじゃないかな、と思うわけです。
ならば、なぜここに家賃を払って出店する会社があるのか。
そこで、銀座という立地を考えてみますと、ここに出店して、看板を掲げるだけで、広告宣伝効果があるわけです。
ですから、銀座店単体で見ると赤字だけれども、会社全体の広告宣伝費だと考えると、銀座の家賃なんて安いもの、という会社さんもあると思うのです。
だから、7,000万円の家賃が払えます。
と言われてしまったら、それって、「不動産」の経済価値と言えるのでしょうか。
不動産鑑定評価基準に想定されている収益性を超越してしまいますので、不動産としてどのように価値判断を行っていいものか悩ましいと思います。
(三面アプローチの原則からみますと、銀座の家賃相場からみて7,000万円だとしたら、市場性アプローチから説明はつきますし、土地価格が高いので費用性アプローチからも説明はつきます。要は収益性をどう説明するか、ですね。)