不動産投資と言えば、まず思いつくのは賃貸マンションでしょうか。
賃貸アパートでもよいのですけど。
世間では「不動産投資、始めてみませんか」とかいう謳い文句があり、庶民も「不労所得」を夢見て、サラリーマン大家などもずいぶん増えているようですが、やはり賃貸マンションを保有している方の多くは地主さんです。
投資家目線で言いますと、融資を受けますので、月々の返済があります。
どんなに魅力的な物件であっても、どんなに家賃収入が多くても、どんなに気前よくお金を貸してくれる銀行さんがあっても、キャッシュフローで月々の返済額が家賃収入を上回ると、投資として成り立ちません。
バブルの頃は、この、いわゆる逆ザヤでも、しばらく赤字が続いたところで、地価がギュンギュン上がって、売り抜けるときにしっかり儲けが出せたわけですが、今となっては、そんな状態は破綻するのが当たり前と思えます。
鑑定評価におきましては、不動産の価格に収益性の側面からアプローチする手法としまして、収益還元法という手法がございます。
代表的な方法は、
〇直接還元法
〇DCF法
の2手法です。
それぞれの手法の詳細は省略しますが、たとえば直接還元法では、単年の収支をもとに、
(家賃収入など)-(賃貸運営に係る経費)=(1年間の純収益)
を求め(一時金の運用益とか資本的支出の積立金とかは省略します)、
(1年間の純収益)÷(還元利回り)
により、元本価格を求めます。これを「収益価格」といいます。
最新の「家主と地主」という雑誌で、この収益価格が積算価格を上回る物件のメリット、デメリット、積算価格を下回る物件のメリット、デメリットなどを整理してくれています。
※詳しくは、こちらを
hudousankanteishi.hatenablog.jp
ところが、地主さんが建てた賃貸マンションは往々にして、この収益価格が積算価格を大きく下回ります。
その理由の多くが、基準容積率をぜんぜん消化していない建物を建てているから。
通常、土地の価格は、どのような建物が建てられるか、を前提として形成されます。
ですが、もともと土地を保有している地主さんは、そんなことは気にしなくていいわけです。
土地から仕込んで賃貸マンションを建てる場合は、土地建物に対して投下した資本の元を取らないといけません。
地主さんは、建物に投下した資本だけ回収できればいいのです。
月々の返済も、建物代に対する借入ですから、土地建物の代金を借り入れた人より少なくて済むわけです。
こうして、収益価格の低い賃貸マンションができ上がるわけですが、だからと言って、この地主さんが投資に失敗しているわけではありません。
地主さんは土地を守ることができる、うまくすれば相続税の節税にもなる、じゅうぶんに目的を果たせます。
現に、大きな借入は負担になるから、容積率をいっぱい使える土地でも、低い建物しか建てないのだと教えてくださった地主さんがおられました。
収益還元法の説明の中で出てきました「利回り」については、また別の機会に書かせていただきたいと思っております。