不動産鑑定士の自由研究

不動産鑑定士という職業の認知度アップに貢献したい

アサヒビール博多工場 移転の感想

アサヒビール博多工場の移転が発表されました。

 

私なりに、思うことを書きたいと思います。

 

①やっぱり高速道路は必須

 

近年、九州で工場誘致に成功しているのは、いずれも高速道路の利用が可能なエリアです。

トヨタ→若宮IC(のちに宮田スマートIC

日産→苅田北九州空港IC

ダイハツ資生堂→朝倉IC

 

産業構造の転換を図る筑豊地域は、工業団地や産業団地を数多く造成していますが、高速道路がない点において、これからも苦戦を強いられることでしょう。

 

②跡地利用について

 

博多から一駅の立地に約12ヘクタールの土地。

最近話題のららぽーと福岡の敷地面積が約8.6ヘクタールですから、アサヒビールが自社で活用するのか、売却するのか、いずれにしましても、どのように利用されるのか動向を注視したい土地であることは間違いありません。

 

不動産鑑定士という立場から申しますと、最有効使用の観点から予測することとなるのでしょうけれども、不動産鑑定評価基準にいう最有効使用は、「良識と通常の使用能力を持つ人が採用するであろうと考えられる使用方法であること」ですから、たとえばこの土地が売却されるときに入札になったりしますと、通常の使用能力を超える特殊能力を持つプレイヤーが落札することになるかと思いますので、現実の使用方法は、鑑定評価でいう最有効使用とは異なるものになると予想されます。

 

はたして、どのような土地利用が行われるのか、予想してみるのも楽しいでしょう。

 

③新工場用地の土地価格について

 

報道などによりますと、土地売買に関する仮契約額は約91億円。

分譲面積が約21ヘクタールですから、

9,100,000,000円÷210,000㎡≒43,333円/㎡(143,250円/坪)

周辺道路の拡幅工事などが進捗している模様ですが、鳥栖ICまでのアクセスもそこまでよろしくないですし、従業員の雇用を継続すると申しておりますが、最寄り駅の肥前旭までは約1キロ。マイカー通勤ですと、現工場から新工場まで約35キロ。ちょっとつらいかな。また、鳥栖市内の幹線道路って、けっこう混むんですよね。

近年、鳥栖市内の工業地の地価は著しく上昇しておりますが、この立地でこの分譲価格が高いのか安いのか、判断は微妙かと思います。

もちろん、自治体が分譲する工業地の場合、土地価格以外の部分で優遇措置を設ける場合が多くありますので、単純に土地価格で判断するのは困難です。

 

④買収用地の農地法違反問題について

 

報道によりますと、産業団地の用地買収にともなって、市が買収した用地を農地法に基づく農地転用許可を得ないまま市の名義で登記した、という状態が違反だったということですが、もともと佐賀県鳥栖市が共同で整備していた産業団地で、農地転用許可の許可権者が佐賀県なのですから、いずれ丸く収まる事態ではあったようです。

まあ、鳥栖の市議会では叩かれたようですけど、地元民にしても、細かい違反をつつくより、早く整備を進めて大企業を誘致した方が利益になると思うのですけど。

 

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