不動産鑑定士の自由研究

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法定耐用年数という言葉のチョイス

先日、研修会に出席したという話を書きましたが、その中で感銘を受けたお話をひとつ。

 

法定耐用年数と言われると、償却資産、たとえば建物の寿命があらかじめ定められているような響きです。

しかも、それを法で定めるなんて。

いかにも、その年数以上は使用に堪え得ませんよ、と言っているかのように。

 

そこで、講師の先生がおっしゃいました。

法定耐用年数という言葉が意味するところは、要するに、法定の減価償却期間なのだと。

 

そう言われてみると、すっきり。

法定耐用年数を過ぎても、しっかり現役の建物はあります。

 

鑑定評価では、経済的残存耐用年数という言葉が使われます。

この建物は、あと何年、経済価値のある建物として市場で扱われるのか、ということです。

これは、物理的耐用年数とは別のものです。

 

この言葉のチョイスが人の心に影響を与える場面と言えば、中古の建物を買って、金融機関に融資してもらう場面ではないでしょうか。

 

耐用年数と言われると、耐用年数を超過するような期間のローンは、金融機関としても躊躇すると思います。

でも、減価償却期間と言われたら、減価償却できる期間を超過するだけで、建物の物理的な耐性とは関係ないのね、となると思います。

 

言葉が持つイメージによって融資を受けられなかった方がおられましたら、お気の毒に思います。

そして、法定耐用年数とかいう言葉を生み出した方をお恨み申します。