不動産鑑定士の自由研究

不動産鑑定士という職業の認知度アップに貢献したい

評価事例 身内に売るわけではなくても

こんな案件で評価させていただきました、という事例をひとつご紹介させていただきます。

 

不動産の価格を売主と買主の間で好きに決めても、取引自体は成立するのですけど、それでは黙っていない人がいるから、不動産鑑定士の出番があるのだ、という説明を以前させていただきました。

 

それが税務署ですね。

 

税務上は、

「不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額」

あるいは

「第三者間で取引されたとした場合に付される価額」

時価とされています。

ですから、主にこれよりも安い価格で取引をすると、恣意的な価格、つまり税金逃れという解釈になります。

 

なんだか偏狭な見方だと思うんですけどね。彼らは性悪説に基づいて動くので、やむを得ません。

 

こういうケースは、多くが身内同士の取引なわけですけれども、今回評価させていただいたのは、他人に売る場合でした。

 

あまり不動産需要がある地域ではなく、固定資産税の半値とかで売りに出していたのですが、その年、所有者の会社が本業で儲かっていたものですから、安く売って損を出すことにはあまり抵抗がなかったようです。

 

安く売ると税金が少なくなりますから、なぜこの価格で売りに出したのかを説明するために、不動産鑑定評価をご活用いただいたわけです。

 

これは、クライアントに不動産鑑定評価を勧めてくださった税理士さんのファインプレーだと思います。

取引の相手方が身内でなくても、税務署に突っ込まれるリスクを回避できました。

本業が儲かっておられましたので、鑑定報酬もはずんでくださいました。

その節はお世話になりました。