不動産鑑定士の自由研究

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情報の宝庫 有価証券報告書

Jリート各投資法人が公表している有価証券報告書は、不動産の情報の宝庫です。

最近は、情報を出し惜しみする投資法人も多いように感じますが、それでも情報量が豊富です。

まず、いつ、いくらで、どんな物件を取得したか、利回りは何パーセントか、賃料収入がいくらで、運営費用がいくらか、修繕費用がいくらかかりそうか、とにかく、たくさんの情報が盛り込まれています。

 

たとえば、賃貸マンションですと、賃借人がたくさんいますから、収支報告において賃料収入の総額を記載しても、どの部屋の入居者の家賃がいくらか、というのは分かりません。

 

一方、近年は、物流施設を投資対象とする投資法人が増えてきています。

このようなアセットタイプになりますと、シングルテナント、すなわち、ひとつの物件にひとりの入居者、ということがよくあります。

そうしますと、収支報告で、賃貸事業収入の金額を記載してしまうと、そのテナントがいくらの家賃を払っているか、ばれてしまいます。

テナントが嫌がっている以上、投資法人としても勝手に情報を公開するわけにはいきませんから、賃貸事業収入を「非開示※」として、

 

※テナントの承諾が得られなかったため開示していません。

 

という注釈を記載します。

 

でも、投資法人によっては、賃貸事業収入は非開示でも、賃貸事業費用とNOIは記載してある場合があります。

 

ここで、不動産鑑定士であれば、当然、

 

賃貸事業収入-賃貸事業費用=NOI

 

と分かりますから、

 

NOI-賃貸事業費用

 

をすれば、賃貸事業収入(すなわち賃料)も分かるのです。

 

しかし、不動産に携わている方で、この収支を見て、賃貸事業収入が非開示になっているから家賃が分からないなあ、とおっしゃる方がいて、かえって私の方が驚いたのですが、不動産鑑定士の能力も捨てたもんではないな、と思った次第です。

 

なお、特に物流施設やヘルスケア関連施設の鑑定評価を行う上で、有価証券報告書の情報は大いに活用させていただいております。ホントありがたい情報です。

 

これまでご覧になられたことがないという方は、ぜひ一度ご覧になることをお勧めします。

 

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