不動産鑑定士の自由研究

不動産鑑定士という職業の認知度アップに貢献したい

不動産鑑定士の裏事情 公的評価

不動産鑑定士は、士業の中でも恵まれておりまして、要件を満たせば、公的評価と言われる、いわゆる公的機関からのご依頼を受けることができます。

 

もちろん専門家の仕事として受けるわけですから、それなりに専門的な知識や技術が必要となってまいりますので、誰でもできる、というわけにはいきませんが、それでもゼロから営業をして仕事を受注しないと収入がない、という他の士業の方と比べると、ずいぶん恵まれております。

 

ここでいう公的評価とは、

地価公示

〇地価調査

相続税評価

〇固定資産税評価

このうち、地価公示と地価調査はセットみたいなものですので、大きく分けて3種類です。

また、固定資産税評価は3年に1度ですが、ほかは毎年やってきます。

 

裁判所の競売評価を公的評価に含む方もおられますが、厳密にいうと競売評価は鑑定評価ではありませんし、評価人をしている不動産鑑定士はきわめて少数ですので、ここには含みません。

 

公的評価の報酬は、実は都道府県によってバラバラです。

不動産鑑定士が少ない地方部に行きますと、この公的評価だけで十分にやっていけるでしょうし、都市部では不動産鑑定士の数が多い分、ひとりあたりが担当する評価地点が少なくなりますので、食べていけるほどには稼げません。

 

地価公示を担当している不動産鑑定士の名簿は、国土交通省のHPで公表されておりますので、ご興味のある方はご確認ください。

たとえば令和4年の評価員は、鳥取県で8名、島根県で11名。

こんな少人数でやっているわけです。

日本中のいたるところにチャンスが転がっているのも、不動産鑑定士という仕事の魅力かも知れません。

水の上の建物 IN岡山

正確には建物ではなく、構築物ですね。

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水の上の構築物1

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水の上の構築物2

合理的な土地利用だと思います。

ゴミの集積場を水路の上に設置するケースは珍しくないと思いますが、規模が大きくなると、それなりに興奮します。

メタバースの土地取引が熱いらしい

もはや私の理解を超えているのですが、仮想世界での土地取引が過熱しているという記事を読みました。

 

私の中では、仮想世界に土地がある、という状態が既にバブルなのですが、その価格が高騰していると聞くと、バブリーな市場環境であると感じざるを得ません。

 

不動産鑑定評価基準では、不動産の価格は、一般に、

(1)その不動産に対してわれわれが認める効用

(2)その不動産の相対的希少性

(3)その不動産に対する有効需要

三者の相関結合によって生ずる

とされています。

 

たとえば私などは、仮想世界で土地を持っていても、何に使えるの?

と思うのですが、先進的な方たちは、ただただ転売益を得ようというのではなく、仮想世界の土地に仮想の建物を建てて、仮想世界内での活動の場とするようです。

また、ディセントラランドでは、供給を抑えて、希少性を高めることで、価格が高騰しているという仕組みもあるようです。

さらに、この仮想世界での活動が、広告、ソーシャルコマース、デジタルイベントなどを通じて収益を生み出すというのです。

 

たしかに、不動産鑑定評価基準に照らせば、仮想世界の不動産に価格がついても不思議ではない状況が生まれているようです。

ただし、現時点では、あくまで価格高騰による転売益が最も大きい効果を生んでいるようで、これは現実世界ですとバブルと呼ばれます。

 

私のようなアナログな考え方では、理解が難しいです。

投資用不動産としての底地

底地について、別の角度からのアプローチです。

近年、Jリートの投資対象に、底地というアセットタイプが増えています。

詳しくは、

 

http://www.tmaxv.co.jp/assets/upload/report/2021/pdf2021_1122.pdf

 

前回お話しましたように、「底地の利回り」という場合、それは、更地価格に対する利回りなのか、底地価格に対する利回りなのか、注意が必要です。

(簡略化して、粗利回りで説明しますと)

更地価格:5,000万円

底地価格:4,000万円

年額地代:200万円

とします。

更地価格に対する利回りは

200÷5,000=4.0%

底地価格に対する利回りは

200÷4,000=5.0%

ですから、ひとことで利回りと言っても、どちらのことか分かりません。

 

さて、先の株式会社ティーマックス発信の有用な資料の見方です。

2ページ目に、直近でJリートが取得した底地の一覧が載っています。

この中で、取得するものは底地ですから、「取引価格」とは底地価格です。

そうしますと、「取引利回り」とは底地価格に対する利回りということになります。

 

さらに、この一覧ではご丁寧に、右側から2番目の列に推定更地価格、1番右側には更地価格に対する取引価格すなわち、更地価格に対する底地価格の割合が載っています。

 

が、この、更地価格に対する底地価格の割合が「1」を超えています。

つまり、更地価格より底地価格の方が高いということです。

 

私見では、地代は土地(更地)の実力に応じて設定されるものであり、実力以上の地代が支払われるのであれば、更地価格に対する利回りが高くなるはずで、少なくとも底地価格が更地価格を超えるような現象は起こらないと思っていました。

しかし、現実の市場では、底地が更地価格よりはるかに高値で取引されています。

 

安定的な地代収入が見込まれる底地は、投資の対象となり得る、ということなのでしょう。

底地の利回りについて

同業者から相談された案件です。

相当にマニアックな内容です。あらかじめ、ご了承ください。

 

相談内容は、

前任者が底地の鑑定評価書を残して退職した。

同一の不動産を再評価してほしいという依頼が来ている。

前任者が書いた評価書の中に、

2.5%と6.0%、

2通りの利回りが出てくる。

なぜ、異なる利回りが同じ不動産に対して出てくるのか、読み方が分からない。

という内容でした。

 

不動産鑑定士なのに、そんなことも分からないのか、と言わないでいただきたい。

眼科のお医者さんは骨折に詳しくないだろうし、整形外科のお医者さんは白内障には詳しくないでしょう。

 

で、結論から申しますと、

2.5%というのは、更地価格に対する利回りで、

6.0%というのは、底地価格に対する利回り

ということで解決を見たのですが、このように、「利回り」と一言で片づけてしまうと、更地価格に対する利回りなのか、底地価格に対する利回りなのかで、意味合いが全然違ってきますので、プロとして、確実に確認しないといけないところ、思い込みを捨てないといけないところであると、改めて勉強になった件でした。

九州の経済規模

先日、研修会に参加したというお話をしましたが、その後、業務多忙につき更新が滞っておりました。

 

研修会では、興味深いお話をたくさん聞くことができましたので、ご紹介したい内容もたくさんあるのですが、なかなか更新が追いつきません。

 

そのうち、時間が経つと、研修会の時に感じた新鮮味が薄れて、何の話だったか忘れていくんでしょうね。

 

今回も研修会で仕入れてきたお話です。

 

経済指標のひとつにGDP(国内総生産)というものがございます。

今のところ、順位としましては、

1.米国

2.中国

3.日本

となっております。

これを、日本を地域別に分けたときの「域内総生産」という指標でみていきますと、最も大きいのが「関東」で、4位のドイツと5位のフランスの間に入ってきますので、日本に占める関東の経済的な重要性というものが分かります。

 

では、ここ九州は、と言いますと、22位スウェーデンと23位ノルウェーの間になります。

 

九州は日本の西の端っこの方にある片田舎ではありません。

ヨーロッパの立派な独立国ひとつ分の経済力があるのです。

 

こんなことを知ったら、勢いのよい九州人は日本から独立しようとしないか心配になります。

法定耐用年数という言葉のチョイス

先日、研修会に出席したという話を書きましたが、その中で感銘を受けたお話をひとつ。

 

法定耐用年数と言われると、償却資産、たとえば建物の寿命があらかじめ定められているような響きです。

しかも、それを法で定めるなんて。

いかにも、その年数以上は使用に堪え得ませんよ、と言っているかのように。

 

そこで、講師の先生がおっしゃいました。

法定耐用年数という言葉が意味するところは、要するに、法定の減価償却期間なのだと。

 

そう言われてみると、すっきり。

法定耐用年数を過ぎても、しっかり現役の建物はあります。

 

鑑定評価では、経済的残存耐用年数という言葉が使われます。

この建物は、あと何年、経済価値のある建物として市場で扱われるのか、ということです。

これは、物理的耐用年数とは別のものです。

 

この言葉のチョイスが人の心に影響を与える場面と言えば、中古の建物を買って、金融機関に融資してもらう場面ではないでしょうか。

 

耐用年数と言われると、耐用年数を超過するような期間のローンは、金融機関としても躊躇すると思います。

でも、減価償却期間と言われたら、減価償却できる期間を超過するだけで、建物の物理的な耐性とは関係ないのね、となると思います。

 

言葉が持つイメージによって融資を受けられなかった方がおられましたら、お気の毒に思います。

そして、法定耐用年数とかいう言葉を生み出した方をお恨み申します。