できるだけ分かりやすいテーマを取り上げるように心掛けているのですが、不動産鑑定士という人種は、実はこんなこともきちんと考えています、というお話をさせていただきたいと思います。
きわめてマニアックな業界雑誌で「Evaluation」というものが発行されています。
紀伊国屋とか丸善とかジュンク堂とかに行かないと買えないのですが、私は以前より愛読しておりまして、最新号に「礼金の運用利回りの整合性に関する検証」という論文が載っております。
執筆されたのは碓井敬三先生。実務修習で講義を受けたことがある先生です。私が書いた答案に、丁寧なコメントをいただき、たいへん嬉しかったことを覚えております。
さて、論文の内容については、雑誌を手に取っていただきたいところですが、かいつまんで言いますと、実務上、敷金と礼金の運用利回りを同率とすることが多いと思いますが、本当にそれでよいのか、という検証をされています。
不動産になじみのない方にとっては、ここまでのお話、何のことだかさっぱり分からないと思うのですが、不動産鑑定評価では、不動産の賃貸にあたり貸主が受け取る一時金を、預り金的性格を有する一時金(敷金・保証金等)と賃料の前払い的性格を有する一時金(礼金・権利金等)に分けて、収益性に影響するものとして考慮します。
このあたり、賃貸運営をしている家主さんとは、少し感覚が違うかも知れません。
たとえば、敷金ですと、預かったままタンスの中にしまっておくと、紛失のリスクしかありませんけれども、不動産鑑定評価では、これを運用してお金を生み出すものと考えます。
長くなりましたので、つづく。