この判示事項は、
「課税庁が評価通達に従って画一的に評価を行っていることは公知の事実であるから、課税庁が、特定の物の相続財産の価額についてのみ評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることは、合理的な理由がない限り、租税法上の一般原則としての平等原則に違反するものとして違法というべきである。」
のあと、以下のように続きます。
「もっとも、財産の価額について、評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情がある場合には、合理的な理由があると認められるから、当該財産の価額を評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることが平等原則に違反するものではないと解するのが相当である。」
ちょっと待って!!!
と言いたいですよね。
とりあえず相続財産は評価通達に従って評価すれば大丈夫というのが公知の事実だったはずです。
ですから、いわゆる時価と評価通達による評価との差額による節税を行ったに過ぎません。
決して、「脱税」を行ったわけではありません。
節税を行うことが、
「他の納税者と上告人らとの間に看過し難い不均衡を生じさせ、実質的な租税負担の公平に反するというべきである」
として、
「評価通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる」
としているのです。
節税しなかったら、資産家にとって相続税の負担は重いです。
たいていの資産家は、相続対策の一環として、相続税対策すなわち相続税の節税を行うでしょう。
①公知の事実として認められている方法で節税をした。
②国税庁に目を付けられた。
③公知の事実を覆す「伝家の宝刀」により、裁判でぶった切られた。
終わったと思っていた相続が、ある日、国税からこんなに多額の更正処分をくらったとしたら、目の玉が飛び出そうです。
何が正解か分からない税金の恐ろしさを知った気がします。
納税者にとっても、税理士の先生にとっても、とてつもないリスクです。