不動産鑑定士の自由研究

不動産鑑定士という職業の認知度アップに貢献したい

税理士にとっては酷な判決 平10(ネ)23号

マイナーな事件ですので、検索してもなかなか見つからないのですが、

 

平10(ネ)23号(H10.11.9判決・東京地裁

 

という事件があります。

 

税理士にとっては酷なのですが、教訓としていただけると、不動産鑑定士としてはありがたい事件です。

 

相続税申告のための税務業務を行っていた税理士が、相続土地の評価額を路線価によらずに申告するにあたって、自身の提案する評価額で申告したところ、税務署から否認され、相続人に損害賠償請求されてしまった事件です。

 

裁判所の判断(一部抜粋)

「税務の専門家である控訴人(税理士)としては、右評価額(※)で申告した場合には、税務署によって否認される可能性があると認識していた以上、自分ではたとえそれがいずれは正当な申告であるとして認められると確信していたとしても、委任者である被控訴人(相続人)に対し、その旨を説明し、また、右価額が適正であることを裏付ける不動産鑑定士の鑑定書を用意するように助言・指導をするべきであったのであって、それを説明せず、また、不動産鑑定士の鑑定書の作成を勧めなかったことは、税務の専門家としての注意義務に違反したものというほかはない。」

 

(※)右評価額とは、宅地建物取引主任者の資格を有する相続人が実勢価額であると判断した1平方メートル当たり41万3千円の7割である約29万円に、税理士判断で1平方メートル当たり10万円を上乗せした39万円

 

たしかに、よく分からないことについて、専門家である不動産鑑定士の助言・指導を求めるよう勧めなかったことが、税理士の注意義務違反というのは、税理士にとっては酷だと思います。

 

しかし、不動産鑑定士の鑑定書の作成を裁判所が勧めてくれているのは、不動産鑑定士にとっては心強いかぎりです。

 

不動産のプロと呼べる税理士の先生は、本当に少数派です。

よく分からないまま業務を進めるのは、税理士の先生にとってリスクでしかありません。注意義務違反と言われてしまいます。

分からないことは、ぜひ不動産鑑定士にご遠慮なく相談してください。

 

https://t-kantei.sakura.ne.jp