不動産鑑定士の自由研究

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不動産の贈与と負担付き贈与の税務

前回は、不動産鑑定評価の最もシンプルな活用方法として、相続税の申告をご紹介しましたが、実務では、相続が始まる前、つまり相続対策として不動産鑑定評価を活用していただくことの方が多いです。

 

相続が始まってから不動産鑑定評価を活用する場合というのは、たとえば遺産分割協議が調わない場合など、揉め事に関連することが多いように思います。

 

そういう意味では、揉め事にならないように、事前に対策を行う場面で不動産鑑定評価を活用していただけるというのは、良質な税理士の先生とお付き合いさせていただいている、ということだと思います。

 

もちろん、揉め事に関連する鑑定評価であっても、我々がお役に立てるなら、と私は意気に感じます。

 

ところで、相続対策に不動産の贈与を行う例は多いと思いますが、「贈与」と「負担付き贈与」では、税務上の扱いが異なる点に注意が必要です。

贈与ですと、相続税法の枠組みのお話ですが、不動産の負担付き贈与については、「贈与時における通常の取引価額に相当する金額」すなわち時価が贈与財産の価額となります。

 

負担付きというのは、多くの場合、ローンのことだと思われます。この場合、不動産鑑定士としましても、残債との兼ね合いがありますので、業務として受託してよいものか、なかなか気を遣うところです。クライアントや税理士先生におかれましても、借り換えにあたる金融機関との協議を詰めておいていただけると、たいへん助かります。

 

忘れてはならないのが、賃貸マンションなどで多いケースですが、預り敷金がある場合、敷金返還債務も負担付き贈与の負担であるという点です。

この点については、国税庁のHPに「賃貸アパートの贈与に係る負担付き贈与通達の適用関係」という質疑応答事例がありますので、参考にしてください。

また、この場合においても不動産鑑定評価を活用する方が有利なケースがありますので、あらかじめ不動産鑑定士にご相談されることをオススメします。