不動産鑑定士の自由研究

不動産鑑定士という職業の認知度アップに貢献したい

過酷な職業 税理士の善管注意義務

以前より、税理士さんのお仕事は多岐にわたり、損害賠償請求に直結する点で過酷であると申し上げてまいりましたが、こんなことで訴えられるのか、という恐ろしい事例をご紹介します。

 

事件番号:平10(ネ)23号

平成10年11月9日 東京高裁の判決です。

 

詳細は省略しますが、相続税の申告を行った税理士さんがクライアントから訴えられた事件です。

相続財産のうち、宅地の評価額について、路線価による評価は絶対的なものではなく、「路線価を下回る価額で相続税の申告をし、これを適正な申告として税務署の認めてもらうためには、地価の動向を周辺の取引事例をもとに把握し、不動産鑑定士の鑑定結果に基づいて申告価額を算定し、これらの資料とともに提出する等の手段を講じなければならない」ことは明らかである、と裁判所に言われてしまっては、税理士さんもつらいことと思います。

 

そして、税理士さんが独自に算定した実勢価格で申告したところ、「右価額が適正であることを裏付ける不動産鑑定士の鑑定書を用意するように助言・指導をするべきであったのであって、それを説明せず、また、不動産鑑定士の鑑定書の作成を勧めなかったことは、税務の専門家としての注意義務に違反したものというほかはない」として、損害賠償請求が認められました。

 

要するに、税理士さんは、宅地の時価を求めるにあたり、不動産鑑定士の鑑定書の作成を勧めなかったことについて、善管注意義務違反とされたのであります。

 

そんなことを言われても、と嘆かれる税理士さんのお気持ちも分かりますが、どうか税務署に何か言われそうな不動産の問題を抱えておられる税理士さんは、事前に不動産鑑定士にご相談されることをオススメします。