不動産鑑定士の自由研究

不動産鑑定士という職業の認知度アップに貢献したい

評価事例 空室だらけの賃貸マンション

質問です。

 

①満室稼働の賃貸マンション

②空室だらけでスカスカの賃貸マンション

 

があるとしたら、どちらが欲しいですか。

 

賃貸マンションなんですから、満室稼働がいいですよね。

 

当然、満室の方が価値が高いと思いますよね。

 

ところが、この価値観が逆転するケースがあるのです。

それが「相続税評価」の恐ろしいところ。

 

賃貸中で、他人の権利が付着していれば、価値が下がる。

これが相続税評価の基本原則。

 

ですから、賃貸中の建物は借家割合が控除できますし、この場合の土地は貸家建付地として借地権割合やら借家権割合やらが控除できます。

具体的な計算式としましては、

建物=(建物価格-借家権価格)×賃貸割合

土地=自用地価格-(自用地価格×借地権割合×借家権割合×賃貸割合)

言葉のチョイスは、分かりやすさを優先しました。

財産評価基本通達で出てくる用語とは、やや異なります。

 

おわかりいただけると思いますが、控除するものは賃貸割合によって変わってきます。

満室稼働でしたら、めいっぱい安くできます。

逆に、すべて空室でしたら、何も控除することができません。

 

理不尽ですよね。

 

やっぱり、納得できない相続人の方がおられました。

空室だらけの賃貸マンションを相続した相続人の方からのご依頼でした。

この通達による評価では納得できない。

不動産鑑定評価額で申告したい。

 

空室だらけだったのには理由があります。

被相続人の方が認知症になられておりまして、契約行為ができなかったので、新しい入居者と賃貸借契約を締結することができず、しばらく放置しているうちにスカスカのマンションになっていたのです。

 

空室だらけの賃貸マンションを鑑定評価すると、満室稼働の賃貸マンションより安くなりました。

もちろん、相続人の方には、鑑定評価の結果を喜んでくださいました。

 

ここから得られる教訓。

①通達による評価は、必ずしも正しいわけではない。

認知症になる前に、できる対策をしておこう。

認知症になったら、まわりの人がサポートしよう。