不動産鑑定士の業界内でたびたび議論されるテーマです。
ある価格、すなわち市場に顕在化している価格
あるべき価格、すなわちその不動産が持っている実力相応の価格
不動産鑑定士が発する価格として、どちらが正しいのか。
いちおう今は、ある価格派が主流のようです。
これが問題になるのは、公的評価の場面です。
公的評価に基づく価格と言いますと、
〇地価公示
〇地価調査
を軸として、
〇相続税路線価
〇固定資産税路線価
ということになります。
地価公示(話の進行上、地価調査も似たようなものとご理解ください)という制度は、地価公示法第1条に、
その正常な価格を公示することにより、一般の土地の取引価格に対して指標を与え、及び公共の利益となる事業の用に供する土地に対する適正な補償金の額の算定等に資し、もって適正な地価の形成に寄与することを目的とする
と書かれています。
しかし、実際には、たとえば地価上昇局面では、不動産市場におけるプレイヤーたちは、公示価格に掛け目を乗じて(たとえば1.4倍とか1.5倍とか)、取引を行っているという話を耳にします。
このような状況では、地価公示という制度自体の意味がなくなる、したがって、不動産鑑定士は市場のトレンドをしっかり追いかけて、「ある価格」を公示しなければ、不動産鑑定士の存在意義が危うくなる、という風潮です。
この根底には、地価公示や地価調査は、相続税路線価や固定資産税路線価という、課税目的の価格の基礎となっているので、文句が出ないように、地価上昇局面で上昇幅を遠慮して価格をつけているのではないか、という疑いの目が向けられているわけです。
長くなりそうですので、次回につづく。