不動産鑑定評価の本質は、不動産の経済価値を「誰かに示すため」であると書いたことがありますが、退職金を不動産で現物支給する場合など、不動産鑑定評価の出番となります。
現金で2千万円の退職金を支給するなら、誰が見たって2千万円の退職金です。
でも、これを不動産で支給するとしたら、その不動産が2千万円ではなく、実は1500万円かも知れないし、2500万円かも知れない、と、これは会社と退職者の間でも揉める原因になるでしょうけれども、当事者間であれば、双方合意すれば、本当の経済価値がいくらか、という問題にならず、2千万円の不動産を退職金として支給した⇔支給された、として済む話です。
しかし、当事者が納得しているにもかかわらず、納得してくれない人がいます。
それが税務署。
ですから、退職金を不動産で現物支給する場合には不動産鑑定評価が必要になります。
ご依頼をいただいたのは、社長さんが現役のままお亡くなりになられた会社さんでした。
実は社長さんは会社名義の家に社宅として住まわれていたのです。
社長さんが亡くなられた後も、ご家族はその家に住み続けたい。
そこで、死亡退職金としてご自宅である社宅をご遺族にお渡しすることとなるのですが、問題になるのは、その社宅の時価です。
このようにして、退職金を不動産で現物支給というアイデアは、さまざまな場面で活用できると思いますが、その際には時価が問題になりますので、不動産鑑定評価をとっておく必要があることを忘れないようにしてください。