不動産鑑定士の自由研究

不動産鑑定士という職業の認知度アップに貢献したい

合理的推定という業界用語

合理的推定という都合のいい言葉があります。

不動産鑑定士なら、一度は使ったことがある言葉ではないでしょうか。

要するに、事実は分からないんだけれども、なんだかんだと理由をつけて、事実であったかのように話を進めてしまうことです。

 

そもそも不動産鑑定士の仕事というのは、だいたいの事において、実際のところはよくわからない不動産の価格や賃料を、あれこれ理由をつけて、これが正しいのであると言い切ってしまうことですので、言葉遊びのような文章を書くのは得意中の得意です。

 

ところで、税務上の必要から、不動産を売却した際に、取得費を合理的に推定してほしい、というご依頼があります。

 

所得税の仕組みは、簡単に言いますと、

(不動産を売った時の価格)-(不動産を買った時の価格)=(譲渡益)

利益が出ますと、この利益に税率を掛けたものを税金として納めなければなりません。

逆に、高く買って安く売ったら、譲渡損となりますので、税金はかかりません。

 

原則として、不動産を買った時の価格というのは、売買契約書などを以て、自分で証明しないといけないのですが、たとえば相続した土地なんかですと、契約書も見つからないし、いくらで買ったかも知らない、などというケースが出てまいります。

 

この場合、買った価格が証明できなければ、買った価格は売った価格の5%とされてしまいます。

ですから、2,000万円で売った土地ですと、

2,000万円×5%=100万円で買ったこととされます。

そして、

2,000万円-100万円=1,900万円の利益が出ているから、

1,900万円×20%=380万円の税金がかかります。

大昔に買ったなら納得ですが、2,000万円で売れる土地を100万円で買えるなら、誰だって土地を買い漁りますよね。

 

では、契約書を見つけられない方が悪いのか、というと、極論すればそうなのですが、税務署もそこまで鬼ではありません。

買ったであろう価格を合理的に推定できれば、それを採用していいですよ、と、もちろん国税局が堂々と言っているわけではないのですが、国税不服審判所という、税金のことで揉めたときに裁決を下してくれるところで、そういう裁決例が出ていることから、いざというときの手段として使う税理士先生がいらっしゃいます。

このとき、この合理的推定を行うのが不動産鑑定士

税額に直結するお仕事ですので、不動産鑑定士としても、どのような意見を述べれば国税局が折れてくれるのか、勉強を積み重ねて、もっともっと人々のお役に立ちたいものです。