不動産鑑定士の自由研究

不動産鑑定士という職業の認知度アップに貢献したい

底地(貸宅地)の価格

最近、借地権とか底地とかのことを書いておりますので、

その流れで、底地の価格について。

 

底地というのは、借地権が付着している土地の所有権部分のことです。

相続税評価では貸宅地と呼ばれます。

底地=貸宅地。

同じものを指すのに、用語がふたつあると不便です。

 

この、底地の価格って、いくらぐらいなんでしょう。

 

相続税評価上は、借地権割合というものが決められておりますので、

たとえば、借地権割合が40%だとすると、底地(貸宅地)割合は60%となります。

つまり、

借地権価格=更地価格×40%

底地(貸宅地)価格=更地価格×60%

あわせて100%で更地価格になります。

 

でも、ですね。

これは不動産鑑定評価基準にいう、いわゆる「限定価格」の概念です。

限定価格とは何か、という点につきましては、長くなりますので、

改めて書きたいと思いますが、いわゆる「正常価格」ではありません。

 

これも用語が交錯してややこしいのですが、

「正常価格」と同義と思われる税法上の「時価」とは、

「不特定多数の当事者間で自由な取引が行われている場合に通常成立すると認められる価額」であり、相続税評価上、土地は時価の8割で評価されます。

 

では、借地権が付着していて、自分では一生使えなくて、わずかな地代収入しか得られないのに固定資産税がかかる土地(貸宅地)を、第三者が更地価格の60%(相続税評価上は×80%=48%)も出して買うでしょうか。

底地(貸宅地)をそんな価格で買うのは、借地人だけです。

三者なら、タダでもいらないと言うかも知れません。

業者が買い取る場合は、更地価格の1割とか2割とか、そんなものだと聞きます。

 

不動産鑑定士として気になる財産評価基本通達の矛盾点でした。

借地権と借地権価格

借地権と借地権価格は同義ではありません。

 

借地権というのは、借地借家法で規定されています。

建物を建てるために土地を借りたら、発生する権利です。

 

一方、借地権価格というのは、その権利の対価です。

ですから、その権利に経済価値がなければ、発生しません。

 

ややこしいですね。

借地権はあるけど、借地権価格はない、というケースはよくあります。

ここ、福岡では。

 

東京などでは、借地権付き建物が一般的に流通していて、

そこらへんで取引されているから、分かりやすいです。

 

でも、ここ福岡では、そんな取引は一般的ではありません。

 

特に東京でバリバリ不動産を取り扱ってこられた税理士の先生など、

福岡に来られると却って混乱されるようです。

 

借地権はあるけど借地権価格はない。

なぜ?

となるかも知れませんが、借地権と借地権価格は異なるものですので、

お気をつけください。

相談事例 借りている土地を買い取りたいと言ってきた(底地の併合?)

底地の併合などという専門用語を使ってしまいました。

(正確には借地権がありませんので、底地の併合ではありません)

 

事例のご紹介です。

こんなご相談がありました。

土地の所有者Aさんは、建設業者Bさんに、資材置き場などに使うための土地を貸していました。

このたび、BさんがAさんに、借りているこの土地を買い取りたいと言ってきました。

Aさんは、この土地をいくらぐらいで売ればよいのか、ざっと計算するために、

 固定資産税評価額 ÷ 0.7(※)

をしてみると、約1,500万円となりました。

(※)さすが地主さん。よくご存じです。なぜこんな計算をするのかは、別の機会に。

 

ところが、Bさんが言うには、

「この土地の価値は1,500万円ぐらいだろう。

でも、この土地には残土が積まれていて、この残土の処分費に5~600万円かかるので、1,000万円で買ってやろう。」と。

 

そうです。

Bさんは資材置き場としてだけでなく、現場で出た残土の堆積場として、この土地を使っていたのです。

借主自ら、土地の価値を下げるようなことをしておいて、そのぶん安くしろとは、あきれてモノが言えませんし、不動産鑑定士の出番以前の問題です。民法に詳しい法律家をご紹介します。

 

この場合、残土でしたが、土壌汚染などでも同様のケースが想定されます。

 

似たようなケースは、実は公共事業にもあります。

たとえば、下水処理場を作るための用地買収で、「将来このエリアに下水処理場ができるから、このあたりの地価は下落する。」という要因を考慮して土地価格を決めたら、地主さんは怒りますよね。

逆に、道路を拡幅するための用地買収で、「将来この道路は広くて交通量の多い幹線道路になるので、この道路沿いの地価は上昇する。」という要因を考慮して土地価格を決めるのも不公平ですよね。

このような場合、「当該事業による影響がないものとして」というような評価条件を付けて鑑定評価を行います。

任意売却と不動産鑑定士のハンコ

不動産をキャッシュで買える人はなかなかいません。

そんなとき、ローンを組みます。

カタカナで表記すると軽やかな響きですが、要するに「借金」です。

この借金の返済が滞ると、お金を貸している側は、不動産をお金に換えて、貸倒れのないようにします。

このとき、残債よりも安い金額でしか売れなかったら、お金を貸している側は損をします。でも、裁判所に申し立てて競売にかけられると、安くしか売れなかったりします。

そこで、任意売却という手続きがとられます。

強制競売になる前に、任意で売却すれば高く売れるのであれば、お金を貸している側もそれを拒む理由はありません。

でも、任意売却で売れた価格が本当に適正な価格で、お金を貸している人に損をさせているわけではないと証明しないと、お金を貸している側としては怒ります。

 

債務整理を請け負った弁護士さんや司法書士さんなどからのご紹介が多いのですが、裁判所から、適正な価格で不動産を売却するので、お金を貸している人に損をさせていないという証明を求められます。

 

こんなときは不動産鑑定士の出番。

 

であることが多いのです。

裁判所も、不動産鑑定士のハンコを重宝してくれていました。

 

ところが、です。

最近では、不動産鑑定士のハンコに代えて、不動産業者さんの「査定書」を3つ持って来ればよい、とか、2社でもいいとか、そんなことを裁判所がおっしゃる事例が発生しています。

 

でも、ですね。

不動産の価格を求めて、報酬をもらえるのは不動産鑑定士だけなんです。

ということは、「査定書」を出した不動産業者さんは、無料サービスで査定書を書いているのですか。

報酬をもらったら違法ですし、報酬をもらっていないとして、タダ働きさせられて書いたその査定書を裁判所が信用しますか、と思うのです。

 

愚痴っぽくなりましたが、何かのご参考になれば幸いです。

 

弁護士の頭脳

少し前に出た本ですが、「弁護士の格差」という本を読んでいるところですので、弁護士さんのお話に触れてみたいと思います。

旧試験では合格率が1~2%の超難関試験だったけれども、
試験制度が変わってからの合格率は20%を超えていて、
新制度での合格者のレベルがどうの、という論調もあるようですが、
とんでもない。

私も不動産鑑定士という資格者ですので、勉強会や異業種交流会などで多くの弁護士さんとお知り合いになりました。
年齢的にも、仲良くさせていただいているのは、新制度の合格者の方が多いですが、やっぱり弁護士さんは別格に優秀だと思います。
頭のキレが違いますし、飲み込みが格段に速いですし、物事を頭の中で整理する能力がずば抜けています。

新制度でも弁護士さんは変わらず優秀というお話でした。

不動産鑑定士の業務 私の得意分野

先に書きましたように、不動産鑑定士の業務は浮世離れしていて、

一般のお客様と触れ合う機会が少ないのですが、

業務を並べてみると、意外と幅が広いことがお分かりいただけるかと思います。

 

少し古い話になりますが、

東京都が尖閣諸島を買い取るにあたって価格を求めたのも不動産鑑定士です。

森友学園の土地価格を求めたのも不動産鑑定士です。

私も、天神のオフィスビルから、山の中の別荘地まで、いろいろと評価をさせていただいております。

 

お医者さんでしたら、たとえば眼科の先生が心臓手術をすることはないと思いますが、不動産鑑定士は一応、どんな不動産でも評価できると思います。

 

とはいうものの、やっぱりそれぞれに得意分野というのはあるようです。

私は不動産マニアですので、不動産市場に流通していなくて相場の見当もつかないような物件なども大好物ですが、そういうご依頼は公共団体からしかやってまいりません。

 

私が、得意分野は、と聞かれましたら、「税務」関係と「争訟」関係です。

改めて後日、事例紹介などできればと思います。

水の上の建物 旦過市場

今日は、私が心惹かれる不動産をご紹介したいと思います。

なぜか、水の上の建物が好きです。

こちら、北九州市旦過市場を裏側から見たところです。

もうすぐ、再開発が行われるので、貴重な思い出になるかもです。

これからも、不動産おたくとして、いろいろな不動産をご紹介していきたいです。

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